南方独立飛行部隊、白百合部隊   第4話 補充兵

 あの最初の出撃から2日たった日の昼下がり。この日榊一飛曹は格納庫内の機体から、使えそうな機体を探していた。この日の朝、彼は隊長の木宮大尉から、新たに補充兵が回されてくるから、彼らの乗る機体を探せという命令を受けたのだ。

 「しかし、本当に色々あるな」

 彼は格納庫内を見て回っていたが、本当に色々な機体がこの基地にはあった。しかも、海外の機種もある。F2Aバッファロー、P−40ウォーホーク、P66ヴァンカード等が合計7機。日本機では、紫電改、キ―60、中島が製造した試作双発単座戦闘機、また海軍用に改造を受けた飛燕、九六艦攻、木製九九艦爆等合計12機。

 よく集めれたもんだと言いたくなるような物まである。

 「あのお」

 彼は紫電改を整備していた整備兵に声をかけた。

 「何だね?」

 整備兵が顔を出した。40歳ぐらいの男だ。

 「これ飛べますか?」

 「ああ、飛べるよって、お。君か紺野一飛曹に惚れた新入りパイロットっていうのは?」

 「ああ、それはもう言わないで下さい!」

 そう、彼はあの戦いの後、この話題でみんなから質問攻めにあいつづけていた。元々狭い基地だから、わずか数時間で基地中に噂が広まってしまった。(震源はパイロットの皆さん)

 そして、その夜。別の恐怖が彼を襲った。彼が深夜、眠っていると、突然部屋の防犯用に仕掛けてあった鳴子が鳴り響いた。(何故仕掛けてあったかは皆さんでお考えください)彼が飛び起きると、一人の男が今にも彼に襲い掛からんとしていた。彼はその男目がけ、枕の下に隠してあったナンブ拳銃で、容赦なく発砲した。

 「や、やめて、降参する!」

 そう言い、顔を上げた男は、誰あろう、あのオカマパイロットの大野二飛曹だった。

 「あんた、いったい何やっとる!?」

 彼が質問すると、大野二飛曹は悪びれた様子もなくこう言った。

 「だって、最近ずっと禁欲していたし、それに紺野一飛曹のような若い人に先越されるなんてくやしかったから」

 「はああ。…あのですね、僕は紺野一飛曹と付き合ってもいなければ、そんな関係も持っていません!!」

 そういった途端、大野二飛曹の顔が笑顔になった。

 「あら、そうなの。よかった。じゃあ、私と付き合って」

 「絶対にやだ!!!」

 「ええ、けち」

 「うるさい、とっとと出てけ!!さもないと殺す!!!」

 彼は銃口を大野二飛曹にむけた。

 さすがに、それで引き上げていったが、そのせいで、彼はその日の夜、一睡も出来なかった。(かわいそう)

 それらのおかげで彼のストレスは相当な量になっていた。

 一方、隊に入って3日、彼も段々と隊員の事が判ってきた。今のところ判っている事を以下に載せる。

 白百合部隊隊員データ

 基地司令官 槙野八十八少将 69歳  この部隊の創設により予備役より復帰した人物。日露戦争から軍人をやっている。

 飛行隊隊長 木宮義彦大尉  33歳  撃墜数52機を誇るエースパイロット。しかし、列機につく者が5度も戦死したためこの部隊に左遷された。以前のあだ名は死神。

 二番機パイロット 近藤紗枝特務少尉 27歳 戦前に飛行ライセンスを取っていて徴集された、女子報国飛行隊の一人。女子隊員の姉役。

 

 三番機パイロット 杉村裕美子特務飛曹長 27歳 上記人物とほぼ同じ。

 四番機パイロット 柿崎志保特務上飛曹  26歳 上記人物とほぼ同じ。

 六番機パイロット 紺野一子特務一飛曹  20歳 仮性半陰陽患者から募った女子特別報国飛行隊の一人。

 7番機パイロット 大野公房二飛曹  24歳 オカマパイロット。以前いた隊で騒動を起こし、1回級降格の上で左遷された。

 八番機パイロット 宮野洋子特務二飛曹 18歳 紺野一飛曹と同じ。(ちなみに、榊一飛曹が着任した日は3番機を借りて訓練していた

 とまあ、こんな所だ。でわ話しを元に戻す。

 「じゃあ、試験飛行したいので回してください」

 「わかった。準備するからちょっと待て」

 そう言い、その整備員は機体の各種点検をすませ、もう一人整備員を連れてきた。

 「よーし、回せ。こいつはセルモーター付きだ」

 さっきも整備員が彼に注意する。

 「了解!ようし。コンタ―ク!!!」

 海軍独自の掛け声と同時に、始動ボタンを押す。一瞬の間を起き。2000馬力誉エンジンが周り出した。

 「発動機よし。チョーク払え!!」

 彼が両手で合図すると、二人の整備員がチョークを払う。そして、ブレーキを解除し機体を前進させる。ゆっくりと滑走路に入る。そして、滑走に入る。機体はスピードを上げていった。トンネルと偽装滑走路を抜け、青空が見えると同時に、機を浮き上がらせる。直ぐに車輪をたたみ上昇する。

 ぐんぐん速度が上昇し、高度も上がる。

 「すごい、定格出力を出してる」

 この頃、日本のエンジンは、女学生や、中学生が作るせいでひどく質が悪かった。しかし、彼の紫電改の誉は2000馬力をだしていた。

 「これを他のやつにやるなんて勿体無いな」

 高度3500m、速度が325ノットに上がり、そう考えていた時、無線がいきなり入った。

 「榊、聞えるか?」

 声の主は木宮大尉だった。

 「ん?なんですか隊長?」

 「今電探に機影を探知した。方角は北、距離70km、2機来る。補充兵が乗ったやつかもしれん。すまんが確認してくれ」

 「了解、榊一飛曹、これより機種不明機の確認に向かいます」

 そう言い、彼は機種を北に向けた。

 そして、まもなく2機の機影が見えてきた。

 「あれか?」

 彼は2機に接近する。間違いない、既に日の丸が見える。すると、その2機はばらけた。どうやらこちらを敵と勘違いしたらしい。彼は無線機を入れた。

 「おい!こちらは友軍だ!」

 彼は無線で怒鳴った。直ぐに若い男の声が返って来た。

 「あ、友軍でしたか」

 そして、2機が彼の機体に近づいて来た。

 「二式中練?いや、違うな」

 彼はその機体を観察する。二式中練。渡辺鉄工所(後の九州飛行機)が赤とんぼの名で親しまれた93式中練の後継機として開発した機体で、アメリカのNA―16を元に開発した機体。しかし、彼の目の前を飛んでいるのは引き込み脚なので違う。どっちかと言うとT―6テキサンに似ている。どうやらこいつも試作機の類のようだ。(後に試製四式中練と判明。性能は以下のとうり。

 試製四式中間練習機

全長8,9m     全幅12,2m   自重2100kg  速力355km

武装12,7mm機銃二基  航続力960km

発動機「寿」四型680馬力

 「よーし、これより誘導する」

 「了解」

 彼は機種を島に向けた。すぐに、島が見えてきた。

 「よーし、先に俺が着陸する。もっとも、自信がないなら通常の滑走路に着陸しろ」

 そう後続の二機に声をかけ、彼は着陸態勢に入った。そして、いつもどおり着陸した。

 そして、機を止め操縦席から出る。

 しばらくして、1機が進入してきたがもう1機が見えない。彼は進入してきた機に近づき、搭乗員に声をかけた。

 「おい、もう1機は?」

 「あ、もう1機は外の滑走路に降りました。直ぐに滑走してくるでしょう」

 しばらくし、彼の言ったとおり、もう1機がやって来た。

 その頃には、隊長ら全員が滑走路に来ていた。そして、隊員は一列に並び、補充兵を出迎える。

 「敬礼!」

 補充兵は四人(男2人、女2人)この内の、二飛曹の階級を付けた若い男が声を張り上げて言った。

 「加賀二飛曹以下四名、着任を報告します」

 「うむ、隊長の木宮だ。よろしく頼む」

 こうして、新たな仲間が増えた。

 そして、この夜。搭乗員控え室は賑やかだった。歓迎会を模様していたからだ。そんな中、榊一飛曹はまたあの切り株にいた。そんな彼に近づく一人の人影があった。そして、それを追う視線も。

第5話「来客」に続く

あとかぎ やっと四話が完成しました。しかし、これからテスト週間。続編はしばらく書けません。ご了承下さい。今回はこの白百合部隊の名前の由来を言います。最初、僕は姫百合部隊と名づけようと思っていましたが、それでは沖縄でなくなったひめゆりの皆さんに悪いと思って換えました。また、白百合のマークを付け戦った女性エース、リリヤ、リトビャク中尉を思い出したからです。ではまた…・

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